休むには長く、学ぶには短いお盆休み2024①

いや、お休みは少なかったです(T_T)

今回のお休みは、買ったはよいけど、読むのに力がいる、題して「骨太な本」です

一冊目 千々和 泰明著 「戦争はいかに終結したか」

いつ買ったかは…お察し下さい。終戦の日に読むにふさわしい一冊かとは思います

本書は、戦争はいかに終結するのかという問いに「紛争解決の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視点で20世紀に起こった戦争(第一次世界大戦から湾岸・アフガニスタン戦争・イラク戦争)の歴史的事例を紹介しております。

戦争終結を進める優位勢力が「将来の危機」と「現在の犠牲」を天秤にかけてどちらを重視するかで、戦争の終結と、さらにその戦争の再発可能性がかわるという考えです

我々がよく知っている太平洋戦争の場合ですと、ドイツの場合はナチズムに対しての「将来の危機」を最大限に重視して紛争解決の根本解決として、徹底的に壊滅するという解決方法をとりました。そのためドイツは無条件降伏を受け入れ、国家解体的な状況、長らく東西に分裂することになります。

日本の場合はアメリカの「将来の危機」(この場合は日本というより、ソ連に対しての危機)と「現在の犠牲」(この場合は、アメリカ兵の犠牲と、徹底抗戦し、本土決戦に持ち込む日本と長期戦を行う困難)が拮抗していました。日本の戦略としてはアメリカの「現在の犠牲」を逆手にとって少しでも有利な「妥協的和平」を勝ち取ろうとしていましたが、アメリカは核兵器の実験成功により、アメリカ兵の犠牲と、長期戦のリスクが減少したため、日本は「妥協的和平」を引き出す余地がなくなった。しかし、日本はその判断を誤り、天皇制維持を固辞したため、結局「紛争解決の根本的解決」の極という形で戦争が終結した。

といった歴史的な動きから、戦争終結に至る各国の思惑を論じております

 妥協的和平に傾いた戦勝終結は、朝鮮戦争や、ベトナム戦争、湾岸戦争です。この場合、アメリカは優位であったにも関わらず、ソ連や中国の参入を恐れて「現在の犠牲」を重視した妥協的な和平を行った。ベトナム戦争も、湾岸戦争もアメリカ本土が攻撃される可能性やフセイン政権という「将来の危機」を軽視していたわけです。その結果遺恨を残す形となります。

 歴史の記録を筆者の視点から見た本著は、各国の信条(というか、合理性)が分かりやすく、なぜそのような結論になったのかが非常に腹落ちします。読みやすいとは申しませんが非常に読み応えのある一冊です。

今世の中にある戦争が「妥協的和平」となるのか「根本的解決」となるのか、歴史は繰り返すですかね。

名古屋市守山区 特定社会保険労務士

吉川未佐子

この記事を書いた人