最近歩合給についてのお問い合わせを連続していただきましたので、そのお話を。
みなさまいわれるお話が「歩合給にしたほうがモチベーションがアップする」です。そうなのかもしれません。本音の所はそこではないのかもしれません
歩合給とはどのような給与かというと、タクシードライバーや、不動産営業などに多く用いられる計上方法で、売上の●%や利益の□%など従業員が挙げた売上・利益に応じて支給される手当です。
売り上げを多く上げた場合には多額の報酬を得られるメリットがありますが、売り上げがない場合には給与額が少なくなる恐れがあります。従業員とはあくまでも雇用契約の為、労働時間に応じて最低賃金の支払いが必要で。そのため完全歩合制(フルコミッション)の方法は原則として労働基準法では認められておりません。なので歩合に最低保証を付けるや、基本給と歩合を分けるなど、働いた時間に応じて最低賃金以上の給与が保証される設定にする必要があります。
また、歩合給を設定した場合の残業単価の計算方法は通常の計算と異なります。
全額歩合給で計算されている方について、歩合給が168,000円、会社の1年間における1箇月平均所定労働時間は月170時間、その時間外労働は30時間だった場合、
歩合給は170時間+30時間=200時間の労働に対して支給されたことになります。そのため
168,000÷200=840円 840円×0.25×30時間=6,300円が残業代となります。割増単価が0.25なのは、すでに「1」部分は歩合給で支給しているからです。(ちなみにこの場合、時給単価は840円となりますので現在の愛知県の最低賃金1026円を下回っております)
固定給+歩合給となっている場合
基本固定給が136,000円 歩合給が50,000円、で1年間における1箇月平均所定労働時間は月170時間で、時間外労働は30時間だった場合
(1) 固定給を1箇月平均所定労働時間で除して時間当たりの金額に換算すると、
136,000円÷170時間=800円
(2) 歩合給を月間総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算すると、
50,000円÷200時間=250円
(3) 固定給部分の残業代と歩合給部分の残業代を計算
800円×1.25×30時間+250円×0.25×30時間=31,875円 となります(この場合時給単価は800円+250円=1,050円なので、現在の愛知県の最低賃金以上の賃金を支払していることになります)
完全歩合制の場合は、上記のとおり残業代が大幅に抑えられることになります。
売上が直結する業界での採用が多いというのは非常にお気持ちよくわかります。従業員のやる気アップもあるとは思いますが…、残業代抑制の為ならば…、歩合給もどうなのでしょうね。
名古屋市守山区 特定社会保険労務士
吉川未佐子