提出代行・事務代理

5月も中旬になりました。あっという間に半袖の人もみえますね。1か月前はコート着てたのに。年々春と秋が少なくなります。

 ここ数年、この時期になると企業様より「新入社員が1~2ヵ月で退職するのですが…退職代行を通じて連絡来ました」というご連絡が来ます。2万から3万かかるので新入社員からすれば、特に1~2ヵ月しか勤務していない場合、安い金額ではないと思います。自分で言ったらただなのに   (*´з`)と思うのは私が古い人間だからでしょうか?

 ちなみに代行とは「ある職を占める者に事故があるとき、又はその者が欠けたときに、他の者が代わってその職務を行うこと。単に「職務を行う」ともいう。」代理とは「AがBのためにCとの間で意思表示をし、又は意思表示を受けることによって、その法律効果がBに直接に帰属する制度のことで、Aを代理人、Bを本人、Cを第三者(相手方)という(民九九等)。代理人は、本人に対立する地位に立つ一方、使者と異なり、自己の意思で代理行為をする。」(有斐閣 法律用語辞典 第4版)

 となります。代理行為は、代理人が行った法律行為の効果が本人に帰属するという、非常に強力な効果を持ちます。一方代行とは法律的に明確な定義はないようです。運転代行や家事代行などさまざまな対象があります。ゲーム代行という、ゲームのレベル上げを代わりにやってもらう業者もあるみたいです。

弁護士法第72条では、弁護士資格を持たないものが、報酬を得る目的で法律事務行為を行うことを禁止しております。退職代行も代理になると弁護士法違反の可能性があります。なので、最近弁護士の方が監修などされている退職代行業者もあるそうです。

ところで…、社会保険労務士ににも「提出代行」と「事務代理」があります

「提出代行」とは、本来、提出義務者である事業主等が行うべき申請書等の提出手続を、本人に代わって社労士が行うことです。「提出代行」の場合、申請書類を作成すること、事業所で作成された書類については記入漏れや添付書類漏れがないかを確認することに加え、最終的に必要書類を整えて行政機関に提出することまでが業務範囲となります。

つまり、行政に申請書類が受理される前までの手続きの代行を意味します。

一方で、「事務代理」では、前項で解説した「提出代行」の業務の他、実際に行政で申請に係る確認が行われた後の質問や調査への対応、さらに申請が審査を通らなかった際の主張や陳述等の行為を事業主に代わって行うことができます。事務代理の場合、社労士に対して提出代行以上の権限が付与されることになる、ということです。

 社労士の事務代理は、「代理」という表現を使っていても、民法上の「代理」とは異なり、代理人は代理した案件についての処分権はなく、代理の内容は申請等及びそれに関する行政機関等の調査、処分に対しての主張、陳述等の事実行為までとされています。

ただ通常、事業主が社労士に手続代行を依頼する場合、「事務代理」を想定しているケースがほとんどだと思います。事業主と社労士の認識の差を埋めるために…事業主に定義を説明するのも重要ですが、「事務代理」だと思って業務に臨むというスタンスが重要かと思います。

名古屋市守山区

特定社会保険労務士 吉川未佐子

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