住宅建材製造販売のA社から業務を請け負っていた会社の元社員5人が、労働者派遣法に基づく直接雇用を求めた控訴審判決が令和3年11月4に大阪高裁でありました
判決では「労働契約申込みなし制度」の適用が初めて認められ、元社員5人はA社と直接雇用関係が認められ未払い賃金の支払が命じられました
ところで…
労働契約申込みなし制度とは?ですが、
「派遣先等により違法派遣が行われた時点で、派遣先等が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元事業主等)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす制度です
なお、派遣先等が違法派遣に該当することを知らず、 かつ、知らなかったことに過失がなかったときは、適用されません
派遣先等が労働契約の申込みをしたものとみなされた場合、みなされた日から1年以内に派遣労働者がこの申込みに対して承諾する旨の意思表示をすることにより、派遣労働者と派遣先 等との間の労働契約が成立します」
違法派遣とは
①派遣労働者を禁止業務に従事させること
②無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること
③事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること
④個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること
⑤いわゆる偽装請負
です 冒頭の判決は⑤に該当するとなったわけです
今までも同様の裁判はありましたが、「派遣先等が違法派遣に該当することを知らず」(派遣業の適用を免れる目的であった)という要件に照らして「分かっていて違法派遣をしていたとまでは言えない」となり、申込みなし制度の適用はありませんでした それが今回「日常的かつ継続的に偽装請負等の常態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の手協を受けていたものと推認する」という喜寿運を示しました
裁判のケースでは請負契約は1990年後半から行われていて、これが「長期」とするとほかのケースを同様にみるのは難しいかもしれませんが、企業としては今後請負契約を締結し、他社の社員に業務を行ってもらう場合には、偽装請負と言われないように、契約形態・指揮命令・資材・器具提供体制・請負会社の管理者について等決めていく必要があります
この労働契約申し込みみなし制度は派遣先・請負先の会社にとって今後大きなリスクとなりえます!
(実際冒頭の裁判では労働者5人に対して約4年分の賃金の支払い命令の判決となりました)
という話を、最近の派遣元責任者講習で話しております
今後の裁判の動向が気になります