年金制度改革法①

令和7年6月13日に年金制度改革法案が成立しました.結構大きな制度改革なのにテレビとかあまり騒いでいないね。決まったら特に言わないのかな? 不思議。

主な内容は

  1. 社会保険の加入対象の拡大
  2. 在職老齢年金の見直し
  3. 遺族年金の見直し
  4. 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引き上げ
  5. 私的年金(iDeCo・企業型DC)制度拡充
  6. 将来の基礎年金の給付水準の底上げ

今回は 1.と2.の解説をします。

1.社会保険の加入対象の拡大

社会保険加入対象が増えます。具体的には①短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃②短時間労働者の賃金要件を撤廃③個人事業所の適用対象を拡大 です。

①短時間労働者の企業規模要件の縮小・撤廃

現在従業員数(社会保険加入)51名以上の企業に対しては、週所定労働時間20時間以上、給与が月額88000円以上、2か月を超えて働く予定がある、学生ではない、のすべての要件を満たした場合には社会保険加入となります。これが従業員数にかかわらず順次適用となります。

スケジュールは

  • 36名以上の企業 …2027年10月から
  • 21名以上の企業 …2029年10月から
  • 11名以上の企業 …2032年10月から
  • 10名以下の企業 …2035年10月から

ですべての企業で2035年10月から週20時間以上勤務する方については社会保険加入となります。

②短時間労働者の賃金要件を撤廃

こちらは先ほどの短時間労働者の要件の中で「給与が月額88000円以上」という要件が撤廃されます。最低賃金が上がり、週20時間働いたら最低賃金でも88000円を超えてしまう意味のない制度になった上に「106万円の壁」という働き控えの1つになってしまったので廃止するようです。

③ 個人事業所の適用対象を拡大

現在、個人事業所のうち、常時5人以上の者を使用する法定17業種の事業所は、社会保険に必ず加入することとされています。今回の改正では、法定17業種に限らず、常時5人以上の者を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大します。
 ただし、2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外です。

※働く人は社会保険に入りなさい!企業も半額負担しなさい!扶養親族は少なくして社会保険の財源確保!な内容です。

2.在職老齢年金の見直し

2026年4月より65歳以上の在職老齢年金の支給停止額が月50万円→月62万円になります。計算方法は  【厚生年金(月額)+給与(標準報酬月額)+過去1年間の賞与合計÷12】が50万→62万円を超えた分について厚生年金が減額となります。影響があるのは会社の役員クラスの方がほとんどなのかな?と(パンフレットでは約20万人が満額受給できるようになるそうです)。

パンフレットには「この見直しは、厚生年金全体の将来の給付水準を下げる影響がありますが、今回の制度改正全体では給付水準は向上します」と小さめの注意書きがあります。

※今、十分にもらっている人の給付水準を上げて、将来年金が少なくなる若者世代の全体をさらに少なくする制度…今が良ければそれでよし!な内容です。

わたくしは士業なので、法律に対しての評価をする立場にはありません。

つづきます

名古屋市守山区 特定社会保険労務士

吉川 未佐子

この記事を書いた人