税金がアップする!社会保険料がアップする!といった記事はすぐに拡散しますね。今回は上場株式の配当や売却益と社会保険料が話題になっておりました。
ヤフーニュースより
『厚生労働省は、自営業者らが入る国民健康保険、75歳以上の後期高齢者医療制度や介護保険の社会保険料の算定対象を広げ、株の配当など金融所得を反映する仕組みの検討を始めた。4月25日に自民党の部会で検討案を示した――と新聞各紙は一斉に報じている。この制度変更が実施されれば、国民生活に大きな打撃となることは必至だという。』
ですが、大きな打撃、ほんとですかーー??少し落ち着いて社会保険料がどのように計算されているか、から整理しましょう。
国民皆保険制度なので、日本に在住している人は基本的になんらかの健康保険制度に加入しております。 その内訳は
- 国民健康保険 2537万人
- 全国健康保険協会(旧政府管掌) 4027万人
- 組合管掌健康保険 2838万人
- 共済組合 869万人
- 後期高齢者医療制度 1843万人 (令和4年3月時点)
です。そのうち全国健康保険協会、組合管掌健康保険。、共済組合は支給されている給与額等から保険料が計算されております。対して、国民健康保険、後期高齢者医療制度は年末調整、確定申告を行った所得に応じて保険料が決定されます。今回対象となるのは、給与以外の金融所得のため、国民健康保険、後期高齢者医療制度の方になります。
健康保険の計算対象となる所得とは、前年中のすべての所得(退職所得を除く。)を合計した金額で、地方税法における「総所得金額等」をもとに計算しており、分離課税される譲渡所得や配当所得も含みます。(※なので、土地などを売却して利益が出た場合、国民健康保険の方は保険料がドカ!!と上がる場合があります。(T_T))
ただ、株の売却益や配当所得に関しては、証券会社の特定口座を利用して、源泉徴収されている場合は確定申告不要となります。確定申告を行わなかった場合は、健康保険を計算する所得とはならないので、健康保険料が上がりません。
しかし、他の特定口座の上場株式等の売却損と損益通算を行いたい場合や、損益通算を行っても売却損が残るときに翌年以降に損を繰り越す場合などは確定申告をすることになります。この場合には、売却益や配当について、健康保険を計算する所得となりますので、健康保険が上がります。
同じように売却益や配当がでても、損益通算などの制度を活用するかどうかで健康保険の計算対象となる、ならないと差が出るのは不公平・不合理である。という理由で今回改正の対象となったわけです。
おおきな影響が出る方は、配当所得・株式の譲渡益が多く出ているいわゆる富裕層かと思います。とれるところから取る!といった政府の強い意志を感じますね(・ω・)。ただ、ネット記事にある
『いずれにしろ、それぞれの立場で国民が選択できる制度になっていて、誰かがズルをして得しているといった類の話ではない。別に制度を利用している国民の側が“不公平”と感じているわけではなく、保険料を徴収する側が取れるところから少しでも取るために国の側が“不公平”とあげつらっているだけではないか。違和感は大きい』というのは違和感がありますね。すべての所得に健康保険料を徴収するなら、配当や、株式譲渡益を対象としないのは「不公平」な気はします。もらっている所得の内容で差がでているわけですから。医療保険負担は確実に増加しています。保険料率を上げる前にするべきこととしては、しょうがないのかなとは思います。(個人の意見です)
今のところNISA制度での所得については対象外とする、となっているようですが、それはどうなることやらですね(*´з`)
名古屋市守山区 特定社会保険労務士
吉川未佐子