改正民法について、労働部門への影響について②

消滅時効についての改定については下記のようになります

(債権等の消滅時効)民法第166条

  • 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する
  • 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  • 権利を行使することができると土岐から10年間行使しないとき

(人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)民法第167条

  • 人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは「20年間」とする

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)民法第724条

  • 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する
  • 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
  • 不法行為の時から20年間行使しないとき

(人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)民法第724条の2

  • 人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは「5年間」とする

労働分野については、ほとんど「知った時」からの5年間が適用され、安全配慮義務違反の損害賠償請求や不当利得返還請求などで影響がでます

※安全配慮義務違反の構成でも、不法行為の構成でも、生命または身体の侵害による損害賠償については5年と20年に整理されました

どのようなときに影響がでるのでしょうか?

例えば、従業員が交通費を不正受給していた場合、会社のお金を横領していた場合などです

従業員に対して返還を求めるお金は賃金ではありません(不当利得)。なので、不当利得返還請求の消滅時効は労働基準法115条の2年ではなく、知った時から5年、権利を行使できるときから10年となります

では、どの契約から改正民法が適用されるのでしょうか?

(時効に関する経過措置)附則第10条

  • 施行日前に債権が生じた場合、(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。以下同じ。)におけるその債権の消滅時効の援用については、新法第145条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
  • (略)
  • 施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。

 「その原因である法律行為」に雇用契約がふくまれるため、雇用契約に基づく安全配慮義務違反の損害賠償請求の場合は、施行日(令和2年4月1日)前に雇用契約が成立している場合には消滅時効については従前の例になります(ただし、契約の更新等を行った場合には、それ以降は改正法が適用されます)

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